「愛がなくても食っていけます。」から
「それを言ったらおしまいよ」「愛すべき娘たち」と
読んでいって、よしながふみは面白いなー、と思い
よし、信じたぞ! と踏み切って「大奥」読み始めました。
現在進行形の長編漫画は裏切られるのがこわいから
作家を信じないと読み始められないんです。
いま2巻目なのですが、
よかったよかった。面白いです。
将軍は女、大奥には美男三千人・・・という
まぁ「真っ赤な嘘」を描いた漫画ですけど
大きな嘘をひとつつくために、
実際の史実の裏打ちがおそらくあって
すごく丁寧な人物描写があります。
「男の嫉妬」っていうのが
作品に貫かれたひとつのテーマだと思うのですが
いやいやこわいんですよね男の嫉妬。
男の嫉妬、なのか、男の女々しさであり
女の男らしさなのか。
よしながふみという作家は、
たぶん、そういうことをこの作品だけでなく
自身の描くもので表現しようとしている人だと思います。
「大奥」は現在5巻目まで出ているんで
現在まだ2巻目読み終えたところでこの面白さなので
ここからどうなるのか楽しみでございます。
大きな嘘をひとつつくために数多くの裏打ち
という点と、物語の舞台が近いという点で
ずーーーっと昔に読んだ「後宮小説
」を思い出しました。
そして他の作品と比べてみて
「本人が自分の持っているものの中で、やりたいようにやった」作品と
「作品のために、やりたくない仕事もやった」作品の違いを
感じました。
「きのう何食べた?」とか「それを言ったらおしまいよ」とかは、
おそらくですけど、作家本人の中の貯蓄で描いた作品だと思うんです。
(それもすごいことです)
んで「大奥」は、歴史の検証とか含めて、やりたくないことも
やっている作品だと思う。
多分、史実の確認とかって、
作家からしたら、めんどうくさい作業だと思うんですよ。
でもやんなきゃ厚みのある作品にはなんないんですね。
そう思いました。
もちろん、前者の「やりたいようにやった」からこその
あっさりめの面白さというのも、その中だから描ける
すこし踏み込んだ心理描写というのも、これはこれでいいです。
家庭料理と料亭の料理の違いのようなものでしょうか。