2009年12月30日

本当にこわかったメアリー・ブレア展

9月の終わりに、メアリー・ブレア展に行ってきました。
いまさらながらに少し感想を書きます。

地下鉄の広告か何かで告知を目にして
見たいな、と思っていたところ
他のブログ等で感想を見たり、作品の写真を見たりして
行きたいなーと感じてました。

別にディズニーくわしくないですけど
なんかこれは、見ておかなくては、という
気持ちにかられて。

すごかったです。
今年、『THIS IS IT』に並ぶ衝撃。
個人的インパクトというか、与えられた影響はそれ以上かもしれない。

人の数も平日なのにすごかったけど
作品がすごかった。

時代を追って見ていくと
最初の頃の作品はやっぱそんなにあかぬけてないし
兄の作品とか他の人の作品もいっしょに展示されてたりして、
おいおいメアリーのだけ見せろよとか思ってたんですが、
だんだん洗練されていくのが見ていて分かった。

わりと初期の、ガッシュか何かで描かれた
勢いのあるコンセプトアートが、いいなと思いつつ
アリスとかピーターパンとかの
あぁ、この紫とか深い蒼色みたいなのが、この人だなぁ
と思って見ていたら、ディズニーを退社したあとの
かわいいかわいい広告の絵があって、
イッツ・ア・スモールワールドで一気に爆発する。

スモールワールド関連は、ほんとに爆発といいたくなるような
すごい作品の群れだった。

かわいい広告の作品時代は結婚して子供がいて、
家族との時間をすごしながら仕事していた頃で、
きっとのんびりすてきな作品を自由に創っていたのね
と思うような、かわいいイラストばかりで、
ウォルト・ディズニーからの要請で復帰して手がけた
スモールワールド関連の作品は
「自由さ」からはかけはなれているように感じたけど、
どういう仕事をしなくてはいけないか、というニーズに
真摯に向き合って作り上げられたものばかりで、
作品に対する熱意や、考えぬかれた時間や労力を感じて
見ていて恐くなった。

スモールワールド関連の作品は、立ち上げから1年たらずで
作り上げられたものと知って、よけいに恐くなった。

仕事をする上で、絵描きさんが作品を仕上げることの時間や労力の使い方は、
なんとなく想像がつく。
それをこれだけの規模で、これだけ才能のある人が
描きあげられたとしたら、と想像したときに
そこにこめられた想いの大きさに心底こわくなった。

そしてそれだけの仕事を成し遂げちゃったことによる
反動がどれだけあるのかと思ってよけいこわくなった。
私がやっている程度の仕事でも、追い詰められるとやっぱどうかしてくる。
それなのにこれだけのことをやりとげたら、人間どうなるのか。
こわくなって涙がでそうになった。

晩年のメアリーがプライベートで描いた作品は
かわいさとはかけはなれていて、あきらかに狂っていて、
それだけ狂ったものを内側にかかえながら
スモールワールドの「仕事」を完璧にやりとげた
その意志の強さと労力がほんとうにこわかった。

美術展には「ウォルトが信じた、ひとりの女性」という
キャッチコピーがつけられてたけど、
子供がありながらニューヨークからカリフォルニアまで
遠距離通勤してたこととか考えると
彼女は信じられていたというよりも
正直、うまく使われていたんじゃないかと思ってしまう。

ただ、スモールワールドの仕事はどう見ても彼女の最高傑作だし、
それを創らせたということは
ウォルトは少なくともメアリーを使うことには長けていたと
いうことだ。
言い方変えれば彼女をどう生かせば輝くかを分かっていたのだ。

メアリーという、作家が本人の意志で自由に創り出したものよりも
ウォルトの要請という枠がある中で創ったもののほうが
輝いているというのは、私にとってすごく驚きだったし脅威だった。

本人の意志で作り上げた「作品」よりも
他人の要請で作り上げた「仕事」のほうが
輝くこともある。

アーティストが、その人が、やりたいようにやった作品こそが
一番すばらしいという幻想を、私はどこかで持っていた。
でも、そうじゃないこともある。
そうじゃないもののほうが、代表作と呼ばれるようになったりもする。

それを目の当たりにして、事実として納得してしまった。

そこから私は、何を学ぶべきなのか。

与えられた枠のなかで最大限の仕事をする、
たとえ望まないことでも、ってことなのか。

だけど行き過ぎて突き詰めすぎると狂うこともある、ってことか。

きっつい仕事でもやり遂げればいいものができるかもしれない、ってことか。

わからん。そのすべてでもあるし
そんな言葉だけじゃ言い切れないこともある。
わからないけどわかった。
なんか、わかった。

ひとつ確かなのは仕事をして結婚して子供を産んで育てて
それでも確かな技術があったから仕事を依頼されて
素晴らしい作品を残しながら絵のスキルを上げていった
これはこの人にしかできない、という仕事をのこしていった
メアリー・ブレアという人がいたことだ。

私の机の前には彼女の絵はがきが何点か貼り付けてある。

スモールワールドの彼女の作品は
その独特な色使いももちろんだけど
計算しつくされた構図やラインがすばらしくかっこいい。

絵描きさんが構図やラインのことを計算したりするのは
きっと私がテープ起こしをしたり資料を調べたりすることのように
めんどうくさいことでもあるはず。

だけどそれをしなくてはいい作品にならないのだ。

そういう意味と、彼女が教えてくれたいくつかのことを
思い出すために今も私の目の前には彼女の作品が貼ってある。

でも、作品より仕事のほうが素晴らしいこともある ってことは
いままで、作家本人が創った作品を見て「?」って
思ったことから考えると、それは希望でもある。
試合だって選手がやりたくない試合のほうが輝くこともある。
そんで、見た側がそう思うことは、決して間違いじゃない。

メアリー・ブレア展は終了しましたが、
お知らせサイトはまだ残っていて、少しだけ作品や経歴が見られます。
メアリー・ブレア展HP


posted by ささきぃ at 23:51| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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