2010年02月07日

『闇金ウシジマくん』に映し出される世界

どっかファンキーなタイトルに油断していました。
暴力とかえぐい世界とかを自己満足に描く漫画なのかなと、
勝手に思い込んで、あまり見ないように、
というか自分とは縁のない漫画かなと。

前にも書いたけど雨宮まみさんの漫画評を読んで、
いつか挑戦しようと思っていました。
1月は忙しかったので、んで忙しいときというのは
不思議と本や漫画をたくさん読んでつめこみたくなるんです。
やらなきゃいけないことに押し出してもらうための薪をくべるように。

そういう中で読んだんだけど結果から言えば完全逆効果。
いやぁ沈んだ沈んだ。
弱っている人は本当にやめておきましょうよと言っておきたい。
かといって幸せで気分いい人に勧めたら水さすようで
すげぇやなやつだしどうしよう。

とにかく全巻読みました。

「テレクラくん」は一番最初に読んだけど、美奈に対して
ウシジマくんが語りかけたこと、美奈を再生させるきっかけになった
杉村が語った言葉は、軽く言おうとしたら軽く言える言葉だけれど、
ちゃんと相手を向いて言っている言葉だというのが美奈にも読者にも
わかるような言葉で場面だった。
それが人に対して効力を持っているんだということが、私には救いだった。
同時にそれを描いている漫画はこわい。とも思った。

「フーゾクくん」と「サラリーマンくん」がとくに後味悪いです。
まじめにやってる人が一瞬のスキから生まれる行動で
全部失ったり崩れたりする話なんで、本当にしんどい。
油断は禁物だと自分を戒める。

でも、その失っていく様にしても、
あぁ、こういう時にこういう流れだったら断れないよねとか、
こういう時はこういうことしちゃうもんだよねと言うような
ところなんで、より自分の生活と引き比べてぞっとする。

「フリーターくん」はハッピーエンドで、読後感は
いちばん好きだけど、このあたりから各章が一本の物語として
本気で人間の生き様を描こうとしている感が伝わってくる。

まぁそれと比例してウシジマくんの出番は少なくなっているように思う。

最新作の「楽園くん」は最高傑作と言っていい章で、
その完成度も、物語性も、ラストももう全部完璧。
中田とキミノリが最後に歩いた道の日差しも空気も、
全部読者に感じられる。

アンハッピーエンドではあるけれど、やってしまったことも
どうにもならないことではあるけれど、それでも、
あの日ああして歩いたことは忘れないよと言いたくなるような、
そんな一瞬があるのも確かだ。

安易にすごしていても「どうにかしなきゃいけない」という焦燥感だけは、
いつもいつも自分を追いかけてくる。
そして「やりつくしたか、ベストを尽くしたか」と自分に問うてみれば、
それは「そうじゃない」。

正直、人にどう勧めたらいいか迷う漫画であるのは今でも変わりない。
17巻オビの、オリエンタルラジオ中田敦彦氏による
「最低な現代日本をエグる地獄の黙示録。」に続く言葉、
「今これを読んでおかないと、多分ヤバい事になる。」という、
焦燥感と不安感にあふれた推薦文も、それを物語っているように感じる。

好きな人や、笑顔の人、幸せに過ごしている人にはあまり勧めたくない。
だけど、この漫画を通じて得た読後感の代わりになるものは、
今のところ見つからない。
どれだけの言葉を尽くしても代われそうにないのだ。

『闇金ウシジマくん 16 (ビッグコミックス)』

「楽園くん」は上の16巻、最新刊17巻の2巻で完結しています。
posted by ささきぃ at 15:27| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする