2012年02月17日

ズシンときた本、よみました

※ショッキングなタイトルの本なので…
妊娠中の女性や「いま、そういう本を読みたくない」
という方は無理しないでくださいね。

「職場流産」という本を読みました。
正式なタイトルは
「ルポ 職場流産――雇用崩壊後の妊娠・出産・育児」

たぶん2年前の自分なら手にも取れなかった本です。

タイトルを見てビックリして
最初に感じたのは正直言って憤りのほうでした。

表紙もタイトルのショッキングさを煽っているように
感じられるので(私がこういう問題に過敏なのもあるはずですが)
よし読もう、だけど
単に仕事しすぎて流産、大変だね女性は、みたいな
安易な結論の本だったらマジで承知しねぇぞ、と
かなり本気の喧嘩腰で挑んだ本です。



(複雑な感情から表紙画像も小さめに)

最初に確認したのが発行年月日でした。
仕事を取り巻く働く環境については
いまの不況っていう問題を取り上げているかいないかで
全然こちらの読むスタンスが違うからです。
発行日は2011年8月25日。
では素直に読みます。

さきに言うと、そういうこちらの喧嘩腰は
いい意味で裏切られました。
重い本であることは確かなのですが
その重さに作者の本気がこもっていたので
確かに受け止めさせていただきました、と
敬意を込めて頭を下げたくなる本でした。

ごく簡単に内容を説明すると
仕事をしながら子供を持ちたいと思う女性たちの
非常にシビアな現状を真っ向から取り上げた本です。

「雇用問題によって『いのち』が奪われていいはずがない」
というのが
本全体に貫かれている断固とした主張です。

ただ、それに対して
「会社は責任もてないよ」
という、こうしたところでも突きつけられる
"自己責任”の壁がある。

実際、その線引きなり見極めなりは
その女性本人にしか取れないし、
ほんとうに会社は責任なんてもてないわけです。

「妊娠し、子供を産んで働き続けることが、
 そんなに悪いことなんだろうか」

「子供を産んでから、周囲に謝ってばっかり」

という本のなかに登場した女性の言葉は、
育児しながら働くことがいまの日本の中で
どれほどむずかしいかという現状をものがたっています。

きつい。
きついとうすうす分かっていた現状が
はっきりデータと文章になっているので
よけいきつい。

子供を産んで職場に復帰しても
保育費や交通費、諸費用を払うと
1日5時間のパートと収支が変わらない、といった
"フルタイム貧乏”なんていう問題も
あらためて知りました。

お金がそういう状況な上に
「子供を産んでから、周囲に謝ってばっかり」
という嘆きもある。働くお母さんはなんて大変なのか。

きついですよ。
きついけど不快ではない。
知りたかったことでもあるから。

最近の女性誌、というか
有り体に言えば日経WOMANとan.anと
Flauがなぜだか分かりませんが
ローテーションなのか?と思うくらいの頻度で
「母になる!」特集をしているのが
ひじょうに気になっていたのですが、
そうした雑誌の特集では
「周囲の協力が必要不可欠」
「妊娠前からしっかりチェックを」といったような言葉で
かるく触れられている部分が
こうした復職や両立の部分でもあります。

読むたびに
いやそこが肝心だろう
とは思っていたのですが
真剣に見るとこれほどきついものか。

そのきつい現状を
看護と介護、保育といった
ひとの命をあずかる仕事にたずさわってる人たちが
ギリギリで踏ん張るように支えてくれている。

介護や保育にたずさわる人たちのお給料が安いということは
知識として知ってはいましたが
そのことについてもしっかり触れている本です。

働くこと、家族、という問題を真剣に考えたら
たしかにそこから目をそらしてはいけない。

きついよと思いながらも頑張って読み進めていったら
障がいをもった人の雇用や
流産、死産を経験した女性の心のケアの問題にまで
触れられていたので、心から感服しました。

書いててつらいですけど
すべての子が何事もなく生まれてくるかといったら
そんなことはないわけです。

「世の中には障がいでなくても、ハンディキャップを
 負う人はたくさんいる。そうした人に適応できない
 世の中こそが変わらないといけない」

きれいごとのようでも
それに取り組んで居る人がいることに
どれほど希望がもてるか。
まして、その取り組みによって売上を
あげている会社がある。

"若い人がいなければ、街に活気は出ない。
当たり前のように子供を産むことができない社会が
経済を支えられるわけがない。
ここで大きく舵を切らなければ、日本は滅びる。”

そして、そのうえで

”子供をもたない選択をした人も、
自らの生きがいを追い求めることができること。”

語られていることそのものは
ニュース等で、しょっちゅう
耳にする言葉のようですが
徹底的に現実を見つめた上での
静かで重い警告であり、真剣な訴えでした。

データが詰まっているのですが、図表などは
少ないので、いささか読みづらい感はあります。
そのあたりはもう少しなんとかできたのではないか、
もっと切り分けて提供したほうが
手に取られやすいのではないか、なにより
タイトルと表紙がショッキングすぎるので
ちょっとそこで手に取られにくくなって
しまっているのではないか、というのが
私のよけいなおせっかい感あふれる正直な感想です。

でも、そうした手に取りにくさを超えて
喧嘩腰ではあったけど
読んでみて、ほんとうによかったです。

最後に、
著者が自分と同い年(1975年生まれ!)だと知って
その事実がどすんと来ました。

人と自分を比較して
悩んだりするようなことは
めったにないんですけど
落ち込みました。
活を入れられました。
ズシンと。

アマゾンへのリンクはコチラ→「ルポ 職場流産――雇用崩壊後の妊娠・出産・育児」

出版社・岩波書店HP内のデータページ
著者からのメッセージ、目次、
あとがきの一部が読めます。
posted by ささきぃ at 22:57| 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする