2009年12月03日

『クライマーズ・ハイ』でハイになれず

映画『クライマーズ・ハイ』を
数日前に見たのですが、どうにもモヤモヤしているので感想を。
勢いというか緊迫感で一気に見るには見たんですが
やっぱ主人公のやってること、おかしいだろ、
というか、話がバラバラで、見終わった後に
クエスチョンマークが頭に乱舞するのです。

以下ネタバレ。

日航機墜落の原因という大ネタを掴んだ悠木が
根回しをして一面の準備をして、
その上で、新聞として事実を伝えるという点で
自身の信条とする「チェック、ダブルチェック」
確実な裏取りが出来ないという点で断念するシーンが
クライマックスにあるのですが。
(はい大きなネタバレです)

正直、一番大きな感想は
「自分なら一面にしちゃうかな」
でした。そういう私は責任感が欠けているのかもしれません。
ですが、映画の主人公の悠木は、
大勢の人を動かして、上に立っているにもかかわらず
チームとしての高揚感というか、
仕事に満足感、達成感を持たせるということが
結局できてないんじゃないでしょうかと。

大勢の人を動かしたなら、それは、
そうしたことに対する責任があるはず。
逆に、人を動かすんだったら、
やったことに何かしらの感動を与えないといけないです。
悠木は最後に自分の信条を取って、しかもそれを批判されたら
辞表まで出してる。それはダメすぎなんじゃないのかと思ったです。

映画では、他がそのネタを一面にしちゃってるということまで
描いてるから、じゃあ、悠木も
やっちゃっても良かったんじゃないかよという
感覚に陥らされてしまう。
信条を取って、それでも信頼を置かれているというだけの人間には
どうしても見えなかったです。

いちおう書いておくとこれは役者さんの責任じゃなくて
監督なり脚本家なりの責任だと思います。

映画の中で、悠木が自分と関わる人たちに
達成感を与えられていない。
そんでそれは映画を見ている観客も同じなのですよ。

こっちだってわざわざこの映画を選んでお金払って
(レンタルだけどさ)時間をさいて見ているわけだから
人間ドラマなり、戦った男の記録なりを感じて
見て良かったと思いたいわけですよ。

なんか、会社って大変だよねという愚痴を
ずっと聞かされているような感覚になったのです。

もし作り手が本物を見せたいなんて思って
映画を作ったのならそれはエゴでしょうと。
誰だって平日そういう社会で戦って仕事しているんだから
休日に見る映画でまで、そんなもの見たくはないのですよ。

上司もひどいなとは思いましたが
もっとよくわからないのが社長との関係です。
中途半端に社長の人間性とか描くなら、映画では
出生とか言い出さないほうがよかったのではないでしょうか。
それよりも家族との関係はいったいどうなっているのかと。
最後にいきなり会いにいってたけど、
どういう課程を経てそういうことになったのか、
最初の場面と途中の会話からすると
どうも仕事人間ゆえに家族から愛想つかされたらしいね
と、想像するしかない。

いっしょに山を登るはずだった安西も、
なんであんなに追い詰められてたのか、よくわからないです。
よくわからないのに、子供と奥さん残して倒れたという事実だけが
どうにも重くてしょうがないんです。

ドラマ版はすごくいいらしいので、
そっちを見てみたいです。

「エリン・ブロコビッチ」とか「ゾディアック」とか
すごく好きなのですが
どっちの作品も、そしてこの作品も
仕事にのめりこむあまりに家庭が壊れているんですよね。

それに気づいたとき、自分は気をつけようと思うと同時に
仕事と家庭の両立というのは、
そうやって映画になるくらい、普遍的な
テーマなのだと思いました、あらためて。

以前書いた「ゾディアック」の感想はこちらでござい。
posted by ささきぃ at 01:11| 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月15日

観客に誇り高く頭を下げるマイケルのように

マイケルジャクソンの映画『THIS IS IT
見てきました。
素晴らしかったです。

マイケル・ジャクソンを知っているつもりでも
彼の歌う姿、踊る姿を
ほとんど見ていなかったんだな、と
気づかされました。

言動やスキャンダルで歌い手を知ったつもりになって
どうするというのか。

歌っている姿、踊っている姿から、
その人のコンディションは分かる。
50歳でそれを保つために、どれほどの努力をしているか。

美しい映像、かっこいい立ち姿に見とれていると、
マイケル自身が、ひどく客観的な言葉で自身と、
自身のステージについて語るのです。

ダンサーたちの独白、
大勢でひとつのことを作り上げていく課程の
プロフェッショナルな姿勢。
憧れのスターと同じ舞台に立てる喜び、
だからこそ完璧じゃなきゃいけないっていう緊張感。

リハーサルの光景に、泣き入りました。

すごくいい撮り下ろしが詰まったミュージックビデオを
いっぺんに見ているような感もあり、
極上のエンターテインメントの裏方ドキュメントを
見ているようでもあり。

本当は存在していない、幻のスターの物語を見ているようでもあり。
それほどすごい。
すごくて、スタッフの心をしっかり掴んでいて、
それぞれの力を最大限に引き出そうと努力している。

なのに、
このステージは日の目を見ることはなかったのだな、と。

ステージ全体として考えると、大きすぎてなんだかぼんやりしてしまう。
逆に、マイケルのステージに出ることが夢だったダンサーとか、
そういう、かかわった1つのパーツになるはずだった人の気持ちを
考えると、泣きそうになる。

そう思うと、この映画が出来たことを、
簡単に喜んではいけないのかもしれないけど、
だけど、
よいものを見ました。
ほんとうに。
posted by ささきぃ at 22:28| 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする